疾風にして勁草を知る 〔千の41〕

 コラム〔千の39〕で「文質彬彬」のことを書きましたが、表題はやはり「草原の風」の文中にある中国の故事です。まずは「文質彬彬」ですが、改めて現代ビジネスの要諦であると言えると思いますし、ドラッカー博士も賛同してくれるものと私は思います。ぜひ今一度〔千の39〕を読んでください。


*ここまで申し上げるためには、自分にも確信が必要ですから、10 日ほど前から「草原の風」上・中・下三巻、中央公論社刊を書棚から取り出し再読しました。この物語は、4~5 年前に読売新聞に長く連載され、多くの読者から支持を得たと聞いています。


*物語の主人公は、古代中国の後漢王朝〔25~220年〕を拓いた劉秀・光武帝。幾多の苦難に見舞われた名君の軌跡を、中国歴史小説というジャンルを切り拓いた著者・宮城谷 昌光氏が、「いつかは書きたい」と 30 年以上前から構想を温めてきたと、当時のインタビューに答えていたことを記憶しています。


*今「草原に風が吹いている」と書き、その風は天が吹かせているように思われるが、もしかすると草が風を起こしているのかもしれない。草とは誰か・・・? 劉秀はこのように考える男。平凡に見えて非凡な名君。空前絶後、一人の若者が寛容性と包容力を持った皇帝に登りつめる壮大な物語に驚嘆です。

 風と言えば、ある時、劉秀の周りから人々が去った時、『疾風にして勁草を知る』と語ったのです。 通訳 : 疾風が吹いて、初めてどの草が勁〔つよい〕かがわかります。この名言は、困難に遭遇してはじめて人の価値が解るという趣にあふれた意味なのです。


*このことについて、去る 6 月 8 日〔月〕の朝会議で「文質彬彬」の流れでさわりを説明しておきました。これは現代日本でも企業の経営陣や、スポーツの指導者がよく引用する故事なのです。物語では戦いにおいて、武将や兵士が味方になったり敵になったり、集合離散を繰り返しながら、勢力がはっきりしてくるわけですが、日和見的な武将や兵士は、困難な局面で逃げる者が出てきます。頭領と困難を共に乗り切る武将や兵士こそ真の味方と観るのは日本の古今でも同じです。真のブレーンは艱難辛苦を共に乗り越えた者であると観るのは、これも現代の会社経営にも通じます。


*この教訓を建築に置き換えた物の世界でも言えると思います。建築設計では、全国に優秀な設計者が沢山いて、日々設計活動に邁進していると思います。それぞれ法を順守して取り組んでいるわけですが、いざ、M 8 クラスの大地震や大火災が起きた時、どの建築も法に基づき許認可を受けた合法建築ですが、残る建築とそうではない建築、命を守った建築と守れなかった建築に分かれるような気がします。やはり、特にバランスの良い平面計画と、各部位が無理無駄の無い設計、常に骨太を意識し、有事の際には減災でありたいと取り組んだ設計が、工事監理においても、あいまいさを戒め、各工程を確実に見届ける建築は、その時強いと言えるのではないでしょうか。『疾風にして勁草を知る』とは『有事〔大地震・台風・火災〕にして建築の強さを知る』に、常に置き換えて業務を進めたいものと考えます。


*主人公の劉秀は皇帝になっても、上記のような精神で周りの武将を配置し固めたが、女性に対しても意識の筋が通っていたと文中にありました。『貧賤〔ひんせん〕の交わりは忘れるべからず、糟糠の妻は堂より下さず』と。通訳 : 貧しく苦しい時代に共に働いた朋を忘れてはならない。同じく貧しい時代に、粗食を共にして苦労した妻を正室から追放してはならない。・・・中国古代でも皇帝になれば側室を何人も置くとか、日本の武将達も同じでしたが、劉秀こと光武帝は糟糠の妻を大切にした。・・・誰でも若い時代は貧乏で苦しい時代があったと思います。また創業時代の仲間を大切にするのも人の道です。また、現代日本では男女同権、男女共同参画など、女性を大切にするのは当然になりましたが、古の時代にこうした節度ある意識はやはり立派だったと思います。


ありがとうございました。


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