舗装の下・・・〔千の49〕
2013-01-10・〔第848回〕で、表題のことを書いています。読売新聞の新春対談で、作家の曽野 綾子さんと、読売新聞本社特別編集委員の橋本 五郎さんの、「日本人論」からの抜粋を書いていたのです。これも記録に残しておきたい有識者の意見です。
*曽野さん『・・・我が祖国に知恵と哲学を持った人を望んでいるんです。指導者は、我々一般人よりも何かしら賢い人であって頂きたい。多くの政治家がどう見ても、票や権勢のために動いているように庶民は思っている。・・・だから知恵のある賢い人でないと困る。最低でも見え透いた愚かなことをしない人。』
*橋本さん『「国民目線」という言葉に、私は違和感を覚えます。普通の国民が考えないことを考えるのが指導者でしょう。国民目線に従わなければ政治家じゃないというのは「ポピュリズム・大衆迎合政治」です。』
*私の意見『政治や政治家のことを言っていますが、これを私達の身の回りに置き換えて考えて見ると、どんな会社のどんな部署のリーダーでも、智恵を出し、勇気を出して行動することが何より大切です。その意味で、リーダーには哲学を持った賢い人であってほしいと思うことに賛成です。経営陣も建築士もリーダーです。・・・確かに、政治については、国民の意見や意向を知ることは大切なことですが、大衆迎合と言われるように、大衆の流れに乗っかるばかりの政治では主体性が無く、国の舵取りとしては心配です。・・・専門職の目線については上から目線などは論外として、素養と知識を前提にして、お客様の要望を受け止めて咀嚼して、全体のデザインを進める必要があります。お客様の目線、子どもの目線、障がい者の目線、お年寄りの目線など、迎合だではなく、優しく融合と分別をする判断が大切だと思います。』
*曽野さん『私達は賢さからも愚かさからも学べます。この頃、国民は不勉強です。私は戦前戦中の無茶苦茶な貧乏を知っていますから、何でもないのですが、今は沢山の人達が、「バブルしか知らない」「バブルがはじけてからの日本しか知らない」という人さえ出てきました。・・・偏ってしまったんですね。お嬢ちゃまとかお坊ちゃまになったから、これをなんとか是正しないといけない。私は各県に未舗装の道を 10 キロぐらいずつ残して、修学旅行の時、そこを走らせたいのです。スコップを積んでおいて、何かあったら土木工事をさせるんです。』
*橋本さん『舗装の下に土があるということが分かるかどうかですね。』
*曽野さん『それが分からないんです。みんな、地球ができた時から、舗装されていたと思っているんです。』
*私の意見『大作家の先生は極端なことを言いますね。私は中高生の 90 %以上は舗装の下は土であることぐらいは知っていると思いますが、物事は表層だけではなく、何事も重層になっていることを、子ども達に教えることについては良いことだと思います。物の仕組み、生活の仕組み、社会の仕組みなどを一歩踏み込んでほしいものです。』
*建築は重層そのもので、責任重大な厳しい仕事です。軟弱地盤に対処し、基礎工事から仕上げ工事まで、技術的なことや法的なことを網羅することと併行して、美しくて強靭な建築を経済的に創るのです。取り組みは厳しい、甘くない ! しかしやり遂げた「達成感」は半端なもんではない感動が待っています。人生と建築を相互に厳しくみつめ、楽しい生活を築きたいものです。
ありがとうございました。
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- by 日比野満