不正の代償 その2 〔千の64〕

 前回が 10 月 17 日ですから、2 週間ほど間が空きました。大きな創立記念パーテイに招待されたり、スリランカに出かけ、「遅咲きの傑出者であり建築家のジェフリー・バワ」さんの建築を訪ねる旅をするなどで、書きたいことは沢山ありますが、気になっていたのは国内の「杭の偽装」問題です。10 月 14 日の新聞報道から現在まで、新聞各紙はかなりの紙面を使って報道が続いています。大企業の子会社の不始末が社会を揺るがす大変大きな事件です。この事件はまだまだ全国に拡大していくのではと思います。スリランカに旅をしたことも書きますが、まずは「杭の偽装」について書くことにします。


*私の初期のコラムにも基礎工事が重要であることを書いていますし、これは千古の時代の聖書にも出てくることなのです。聖書には『愚か者は砂の上に家を造り、賢い者は岩の上に家を造る』という教えがあります。大昔でも、砂の家は工事が易しく造りやすいが、一たび大雨が続いたり、地震が起きれば、基礎の下の砂は流れ不安定になり家は危ない。楽をして砂の上に家を造ってはいけないという戒めの教えです。反面、岩の上に家を造るのは大変です。岩を破砕しレベルを調整して基礎工事をするのですから、時間と労力は大変です。しかし、大雨でも大地震でも安心です。苦労を惜しまないで岩の上に家を造りなさいという激励であり教えです。


*現代建築では、地質調査を綿密にして、その資料に基づいて基礎設計をします。地盤が良いことは何よりで、安定していることは基礎工事が割安になります。その反面、埋め立て地盤やもともと軟弱地盤であったところや、丘を削り谷を埋めたりたりしながら新しく造成した土地もありますし、川が氾濫を繰り返しヘ下流にヘドロが堆積した軟弱地盤もありますが、現代建築にはこれらを技術的に裏打ちし、どんな状況の地盤であっても、やり遂げる対応技術力は日本の建設界には備わっていると言っても過言ではありません。建設界とは建築と土木の両方のことです。土木と言えば、先日、「ゴールデンゲート物語・夢に橋を懸けたアメリカ人」という本を読みました。1937-4-28〔78年前〕 に完成した世界一の吊橋では、二か所のタワーにはそれぞれ 約 3 万トンの死荷重と約 4 千トンの活荷重に耐えるタワーでありその基礎工事を激しい潮流の中、海底−30 mの所で築いたと書いています。すごいことをやるものです。日本の戦後の長大橋ではご存じ瀬戸大橋です。海底地盤の徹底調査、その上で対応する確実な基礎設計、そしてやり遂げる施工技術など、技術力は備わっているのです。建築も同じです。超高層建築から特別養護老人ホーム、「幼児の城」にいたるあらゆる建築に、基礎調査に対応する基礎設計、確実な施工をそれぞれが担当する部署でやり抜いてきたのが戦後の建築界です。


*どんなに優秀な技術で設計していても、優秀な施工技術があったとしても、それぞれの担当部署の人間が、責任を持って確実な施工がなされないのでは話になりません。

 確かに、設計監理者、元請工事担当者、下請け工事担当者が技術的には優秀であっても、所定のことを所定の通り、言わば、仕様書通りやり遂げないことに意識があれば、それは不正です。『仕事が重なって忙しい、仕事の能率が悪く残業が続いている、体調不良、予算が厳しい、工期が厳しい、雨がよく降る、雪が降る、上司を好きになれない』など、逃げ口上の多い人は問題です。結局は「報告・連絡・相談」を密にする責任意識と協調が欠けている人は技術者として失格です。責任感を保てない「人間力」が欠けているのであれば、担当させてはいけないのです。

 コラム〔千の61〕「人間学入門」の後半で、『嘘とごまかしは絶対にあかん』『人に迷惑をかけることは あいならん』ということを書きました。これは高度な技術のことではありません。どんな仕事に従事しても、「ならぬことは ならぬ」人間としての重要な基本です。

 コラム〔千の60〕「不正の代償」の後半で不正とミスの違いを書きました。『不正はミスはではありません。ミスも無い方が良いのは当然ですが、チームでも個人でも全力で取り組んでいた上での、うっかりミスの過失とか、人智を超えて負の現象が現れたなど、これは速やかに是正し正常な軌道に乗せれば良いのです。』工期が遅れるとか、予算がかかるなどのことでも、後戻りする勇気が結局は安くつくわけで、ミスを承知でやり過ごした「不正の代償」は、その何百倍も高くつくことを技術者や企業経営者が知っておく必要がありますし、企業経営者は社員の倫理教育を常に徹底させることだと考えます。


*2015-10-19・午後 4 時 30 分・品川高輪プリンスホテルにおいて、「元旦ビューティ工業株式会社」の創業 50 周年の座席方式による 1000 人の大パーティがあり招待をいただき、うれしく参会させていただきました。誠におめでとうございます。舩木元旦社長が創業して 50 年ですが、成長を続けながらも苦難を乗り越えての 50 年で、それは舩木さんの人間力の具現化に努力したものだったと思います。私の好きな先人の言葉で『10 年偉大なり、20 年畏るべし、30 年歴史になる』がありますが、これが 50 年ですから、先人や古人も驚くばかりでしょう。

 技術開発力とその製品、多くの人財と団結力、東京大学名誉教授・内田祥哉博士など多くの建築界の有識者の応援もあり、今後の成長も大いに期待するところです。

 社会の設計者の多くも、良質の建材とその誠実な施工を評価をするところでしょうし、私も個人として応援させていただきますが、事務所としてもまた大いに期待するところです。


ありがとうございました。




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