サスティナブル 〔千の68〕

 表題の「サスティナブル」とは、持続可能なという意味としてよく使われています。20 年も前に「サスティナブル建築」として、私は課題として取り組んできました。要するに長持ちする建築です。仮設建築とか、イベント用の臨時建築とは一線を画し、とにかく、世の中のあらゆる建築は長寿命でなければならないと私は考えてきたのです。設計者の多くはこのことについては当然のことと思って設計活動をしていると思いますが、実際は持続という面においては、バラツキがあるように聞いています。


*先の杭偽装事件では横浜のマンションが数センチ傾いたなどの話は別にしても、屋上防水の不備で雨漏りがしたとか、耐震スリットにより壁とサッシュの止水の関係などで雨が染み込むとかはよく聞く話で、これは直ぐ改善しなければならぬ仕事です。街角でよく見かけるのは、既存マンションに足場を掛け、外壁の吹き替えなど住民の積み立てた修繕管理費によって定期的に修理修繕をする工事などは、長く持続させるために定期的に手を入れることは大変良いことです。

 官庁建築でも民間建築においても、長い間、機能的にも安定して使われ、内外の汚れも少なく、耐用の長い持続建築を理想とするところだと思って取り組んできました。完成後維持するのに経費の掛かる建築と、あまり経費の掛からない建築の差は建築の優劣を決める一つの要素でもあると思っています。今後も「サスティナブル建築」・持続力のある建築を創造することが、お客様への真の技術サービスであり、これに力を尽くすことにおいて設計作業を持続させたいものと思います。


*今日は「サスティナブル経営」について書いておきます。単純に言えば、会社の経営が長く続けられることですが、これがそんなに甘くないのです。会社というのは、司法書士にお願いすれば法務省に届け出る書類を作成してくれ、誰でもいつでも設立できます。これを持続させるとなると簡単ではありません。「10 年偉大なり、20 年おそるべし、30 年歴史になる」と、先人の言葉を借りて以前から私はよく引用しますが、社会のデーターでは登記してから 20 年で半分の会社が消滅しているとのこと、理由は色々あるとしてもこれは事実のようです。


*企業の持続性について、三菱総合研究所 理事長の小宮山 宏氏〔元第28代東大総長〕は、東洋経済誌の中で下記のように述べています。『社会的な課題に企業もきちんと対応しなければ、サスティナブルではない。今はそういう時代に入っていると私は考えています。ただし、そのことに気が付いていない企業もまだ多いのが現実です。社会的課題は、ビジネスにとってはニーズです。社会的課題にきちんと対応し、早期に解決していくことで、新たな需要、新たな経済活動、新たな産業を創出していくことができます。そういう意味では社会的課題をいち早くとらえ、課題解決に真剣に取り組むことは、企業にとって生き残るために必要なことなのです。』・・・日比野設計を検証してみます。


*日比野設計は創業昭和 47 年ですから、現在 44 年目を歩んでいます。創業から平成元年まで、昭和 48 年のオイルショツク後からの 17 年間は、バブル経済の登り坂で、社会は何業でも大忙しで、不動産と建築はものすごい勢いでした。こういう時代は社会がやれと言うものをなんでも設計したものです。さて、バブル経済が崩壊して、世の中は静かになりました。平成元年から 10 年間は、設計事務所も工務店も、仕事探しに大変な時代だったと思います。私はこの辺りから新聞や色々のニュースが、日本は人口減であり少子化高齢化社会になる、との記事が多くなってきたように思っていました。想えば運よく、偶然性などもあり、この時代に特別養護老人ホームや幼稚園の建て替えを担当することができました。これを現在まで持続させ、経営資源として推し進めてきたのです。

 人口がどんどん減っていけば、社会保障など築いてきた社会の制度が成り立たなくなります。少子化に歯止めをかけなければなりません。若い夫婦の誕生を促進させ、子どもを産み育て易くする社会でなければなりません。社会の身近に、子どもを預けて安心できる保育園が多く建設されることが大切です。幼稚園は少子化で入園幼児が減って、各園の経営が下降線となってきたとよく聞きました。競争社会ですから、新しい耐震設計で清潔で明るい園舎を建設すれば、保護者の選択の眼にとまるのではと多くの園にアピールしましたし、幼稚園のこども園化のお手伝いもできました。


*当時から高齢化社会から高齢社会になることは、時間の問題だと言われていましたし、確かに特別養護老人ホームに入居したいお年寄り本人や、ご家族の要望が多いのですが、建設が追いついていないのは、当時から現在まで同じです。

 今手元に、「下流老人」「老人漂流社会」「老後破産・長寿という悪夢」という三冊がありますが、この 10 数年の社会現象であることは間違いないと思いますし、これから団塊の世代の方々が入居を希望する時代であるわけで、「待機老人対策」は今後も大きな社会的課題でしょう。


*全国の建築士会が、7 年ほど前から専攻建築士の届け出を進めていますが、私達の事務所は 20 年ほど前から、「幼児の城」「特別養護老人ホーム」「障害者施設」などに特化する設計活動を続けてきました。この 20 年を振り返れば、小宮山先生が言う社会的課題を持って、それは、「待機児童対策」であり、「幼稚園のこども園化」、さらに「待機老人対策」という需要に対応してきたことは事実で、大変良かったと思います。


*まだまだ、上記の特化した設計活動は、社会的課題の持続という日々が当分続くものと思いますが、やがてまた新たな社会の需要が求められる時代となるでしょう。この対応が我々の企業価値の向上につなげることを常に心においておくことが必要かと思います。手始めに、社会的課題の一つとして建築技術の確立と充実について、去る 9 月に日比野設計の姉妹会社「日比野設計技術」を設立いたしました。今後、両社が「心と力」を合わせて、お客様に、社会に貢献させていただく所存です。


ありがとうございました。



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