感動 〔千の79〕

 13 年も前の月刊誌「致知」の特集です。感動を憶えた記事は心に残っています。2003 年 9 月号を探し出しました。特集は「感動・笑・夢」で、編集長は児童文学作家の故・椋 鳩十さんの話を引用していました。


*『椋さんの故郷は木曽の伊那谷の小さな村。30 年ぶりに帰省し、小学校の同窓会に出席した。始めは誰が誰やら分からなかったが、次第に幼い頃の面影がよみがえってきた。だが一人だけどうしても思い出せない。背が低くて色が黒く、だが威風がある。隣席の人に聞くと、「あんな有名なやつを忘れたのか。ほら、しらくもだよ」。椋さんは、え!? となった。』


*『しらくもは頭に白い粉の斑点が出る皮膚病である。それを頭にふきだして嫌われ、勉強はビリでバカにされ、いつも校庭の隅に寂しそうにしていた。・・ゆったりとした風格を滲ませてみんなと談笑している男が、あのしらくもとは・・。聞けば、伊那谷一の農業指導者としてみんなから信頼されているという。』


*『二次会で椋さんは率直に、「あのしらくもがこんな人物になるとは思わなかった。何かあったのか」と聞いた。彼は「誰もがそう言う」と明るく笑い、「あった」と答えた。』


*『惨めで辛かった少年時代。彼は我が子にはこんな思いをさせまい、望むなら田畑を売っても上の学校にやろうと考えた。だが、子どもの成績はパットとせず、勉強するふうもない。本を読めと言っても一向に読むふうがない。・・彼は考えた。子どもに本を読めというなら、まず自分が読まなければ、と。農作業に追われて疲れていたし、最初は投げ出したくなったが、それでも読み続けた。そのうち本に引き込まれるようになった。感動がこみ上げてくる一冊に出会った。ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」。聴覚を失ってなお自分の音楽を求め苦悩したベートベンがモデルという名作である。・・ジャンはどんな苦しい時でも必ず這い上がってくる。絶望の底に沈んでも、また這い上がってくる。火のように生きている。・・あまりのその感動に三回も読んだ。』 


*『自分もこのように生きたいと思った。そのためには何か燃える元を持たなければ。自分は農民だ。農業に燃えなくてどうする・・。彼は農業の専門書を読みあさり、農業の専門委員を訪ねて質問を浴びせ、猛烈に勉強を始めた。斬新な農業のやり方にも挑戦し成功させ、しらくもはみんなから頼りにされる農業指導者になった。・・この話を聞いた椋 鳩十さんは、力強くこう言っている。「感動というやつは、人間を変えちまう。そして奥底に沈んでおる力をぎゅうと持ち上げてくれる」』。


*いい話ですね。私も感動しましたので、要約して再現しました。・・想えば、新聞やTV報道で、殺人、窃盗、詐欺、政治経済界のルール違反など、いつの世でもありましたが、最近、特に多く感じているのは私ばかりでしょうか。これらの犯罪当事者は幼少から少年時代、高校や学生時代、友人との交遊関係やスポーツとか文化活動において、さらに社会への奉仕活動において、心身に感じる感動体験が少なかったのではないかと私は考えます。

 勝つとか負けるなどに関わらず、チームメイトと共に、練習を重ね、上達を確認し共有出来た時の感動は忘れることはできません。コーラスにしろ演劇にしろ、練習の成果をステージで発表した感動もまた忘れられないことでしょう。「利他の心」はここから生まれてくるものと思います。・・私は創業以来 45 年、建築創りで最も大切なことは、チーフとスタッフ、お客様と、さらに工務店のみなさまと感動を共有することと、伝えてきました。


*作家の故・司馬 遼太郎さんは、「日本人とは何か・・思索紀行」の中で、『これからの日本人が、無感動体質になるのが一番怖い』と述べています。・・私も大いに賛同するところです。建築を創って・小説を読んで・ドラマや映画を鑑賞して・友と交友して、スポーツを観戦し、プレイを楽しんで・・・感受性を磨いて感動できる人間に成長してほしいと思います。


ありがとうございました。



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