三つのつくる 〔千の84〕

 今、2010 年の「下町のロケット」で直木賞を受賞した池井戸 潤の「七つの会議」集英社文庫本第一刷を読了しましたが、これまで 45 万部を超える売れ行きのようです。

 昨年の「下町のロケット」のTVドラマも十分楽しむことができました。事実とフィクションの織り成す構成が作家や脚本家の筆力だと思いますが、私も小さな会社ですが長く経営しましたので、人間の機微に触れる感動や悲観など度々経験したことを思い出しました。

 さて「七つの会議」のことは、題材は違いますが昨年来の企業不正に通じることで、担当者がコストダウンによって業績を上げ出世しようとすること、コストダウンは製品の質〔強度〕を落とすこと、部品の下請け会社を泣かすことにつながるが、これを強行する。やがて製品の不良が消費者から届き始める。それぞれの関係者、特に部課長など幹部が知る。正々堂々と早期リコールを公表し改修や回収に動くか、リコールの公表は保身と同時に大企業の子会社である中小企業として、会社存亡の危機と苦悩するわけです。社長や一部の役員は隠蔽して逃げ切ろうとする。やがて不正は内部からジリジリと広がるのです。虚飾の繁栄か、真実の清算か・・・強度偽装に気づく時・・・社員間、役員間の確執や正義感も含めて、親会社も巻き込み大きな問題に発展するわけです。・・・また読んでみてください。

 例えば・東洋ゴム・東芝・横浜のマンションよる杭問題と鉄筋切断・ダイコーによる食品不正など、これらの会社の内部でもあったことだろうと思わせる似たようなことを、よくもここまで、読者の興味を引き込む小説として書けるものだと、池井戸 潤の筆力に驚くばかりです。

*それでも作者の良心だろうか、苦悶する正義感のある一人の役員は、就職前の学生時代、田舎で父親が小さな商売をしていたことを回想して、亡き父親のアドバイスを思い出す場面があります。

 『仕事とはどういうもんか・・・一つだけ言うとくけど・・・その時父は言った「仕事っちゅうのは、金儲けじゃない。人の助けになることじゃ。人が喜ぶ顔を見るのは楽しいもんじゃけ。そうすりゃあ、金は後からついてくる。客を大事にせん商売は滅びる』。・・・この言葉は役員の胸の深いところに沈み込んでいた。・・・不正など生まれる企業ではいけない。

*想えば、NHK朝ドラ「あさが来た」は来週が最終章ですが、時代背景は幕末から明治時代、成功した女主人公「あさ」〔実話・炭鉱経営・銀行経営・生保経営〕が、「一生一事一貫」を貫いたモットーはお客様のためになることで、稲盛 和夫さんの「利他の心」、近江商人の三方よし〔買い手よし、売り手よし、世間よし〕の商訓に通じるものでした。

*これこそ我が社が続けてきた 45 年間の朝会議で、折々に話し続けてきた基本です。我が社のみならず、どんな職業の企業でも共通するものだと確信します。

 建築設計において、設計者だけが満足するような仕事ではいけません。「私たちの若い頃は著名な建築家も含めて誰もが、何かカッコイイものをつくるぞという風潮があったのは事実です」しかし、今はこういう建築家は減ってきたように思います。人々のための建築を設計し、お客様に喜ばれ、工務店の皆様も工事をまとめた満足感があり、様々な材料メーカーも商品を供給した喜び、同時に職人さん達も自分が手掛けたという心意気など、関係者皆が自信を持って思い出に残る仕事でありたいものだと思います。私は 30 年も前から、工事完了後、プロジェクト関係者の建築同窓会を、10 年後、15 年後に開けるような「絆」が生れているのが理想と思い続けてきました。・・・どこからでも、何からでも学ぶということからすれば、小説からも学び得たわけです。私は先日、会社の新役員達に「三つのつくる」を託しました。

*さて、表題の事で新役員に私の希望と期待を込めた、「三つのつくる」は下記の通りです。

一つ、人をつくる。・・・若い社員を育成してください。若い社員は会社の次代を担う人財です。技術、デザインの充実と同時に人物を磨く育成を共存させてほしいのです。

二つ、建築をつくる。・・・我が社の役員はプレイングマネジャーです。自らもチーフとして良質な建築設計を創ることに携わり、常にお客様に接するのです。

三つ、会社をつくる。・・・上記の二つと共に大切なこととして、会社はサスティナブル〔経営持続〕であることが大切です。お客様の建築を創り続けることと同時に、守り続けることが大切です。そのためにはまず、社員及び社員の家族共々「物心両立」ができる生活基盤を確立することで、それでこそ大いに働けるのです。長期安定して経営持続するためには、「入りを図り、出を制する」財務内容の充実が大切で、これこそが社会の中での「総合信用」を確立することです。

ありがとうございました。


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